白昼堂々忍ばない忍者が居た。京都迷宮案内!?(京都)

或る秋晴れのとても気持ちの良い日に忍者を見た。

僕の大好物である、錦市場で売っている豆乳ドーナツでも食べながら、
ぶらぶら二条城まで街歩きでもしてみようと京都へ行った時の事である。

阪急河原町駅で下車し錦市場の方へ向かってとことこ歩く。
この時はいつもと違い「たまには路地裏を抜けて行くのもいいかも?」と、
これまでほとんど通った事のない裏道を通ってみる事にした。
ちょっとした探検気分だ。

河原町は若者達で溢れかえっていて混雑ぶりがスゴイ。
大阪なら心斎橋、東京なら原宿とかかな(←行った事ないけど)。
京都には神社仏閣や歴史的建造物、ヘンテコなスポットなどを見るのが目的で
出かける僕には、オサレスポット河原町なんかまずもって用事のない場所だ。
うぅぅぅぅ…。
河原町はいつもいつもいつもアウェイ感が強くすぎて居たたまれない!
逃げ去るように、気持ち小走りで路地裏に駆け込むと

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んんん?何だあの建物は。
そこには黒っぽくて大きな、和風のようで和風とも言い切れない
どことなくヘンテコな外観の建物があった。いやヘンテコと言うかインチキっぽいと言うか。
…そうだ!これは外国人が抱くインチキな日本のイメージっぽい感じなんだ!
ゲイシャ、ハラキリ、エトセトラ。そう、お土産用鉢巻きなんかに
書かれているあの感じ。

…こういう胡散臭い感じ、大好き!
と、ウキウキな気分で近づいてみたら

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黒ずくめの衣装を着た人がそこに居た。

あ、あれって、もしかしなくても「忍者」だよね?
何かのお店の宣伝?お土産屋さんの客引き?
…ちょっとどころかかなり気になる気になるちゃん。
だがしかし、世界一人見知りと自他ともに認める僕にとっては、
この忍者さんに「あなたなにやってる?(片言)」
なんて声をかける事は苦痛以外の何物でもないのだ。
嗚呼!イタリア人になりたい!

声をかけるかかけまいか。
不審者丸出しで悶々としていたのですが、その時ふと思い出したのである。
そう、京都に忍者をテーマにした飲食店が出来たとかいうニュースがあった事を。
確かそこには迷宮?が作られていて、飯を食わなくても体験する事が出来る
とかなんとか言ってたような気ががが。
…そうか!ここだったのか!そして迷宮って何?

とりあえずまずは敵の事をよく知らなければなるまい。
敵を知るものは百戦危うからずだ。
だが、相手は歴戦の忍者である用心に用心を重ねなければな。
まずは気づかれないよう曲がり角に身を隠し、じっくりと様子を伺う事にした。
んー、レストランや土産物売り場への入り口と、クレープなどの販売をしている
窓口がある。
数分かけて偵察した結果、わかった事はたったこれだけだ。

よぅし。このまま見てても埒も開くめぃ。
と、ノミの心臓以下と呼ばれたちっぽけな勇気を全力で振り絞って
忍者さんに近づいてみると…はぁぁぁん。
気付かれた!目が合った!ロックオンされた!
殺気を辺りにまき散らしながらこちらに近づいてくる忍者さん。いや、くノ一さんだ。
僕の目の前に立つや否や、開口一番、「お兄さん一人?一人でも迷宮体験は出来…」
と、思いっきり流暢に説明された。こちらが聞きたかった事をすぐさま察知するとは
…こやつ、出来る!

くノ一さんが言う、迷宮ってのは結局どんなのだかよくわからなかったけど、
いい機会だし入ってみてもいいかなぁ。一人だけど。
なぁんて思ったのだが、
怖いなぁ、怖いなぁ…。
何だかすごく嫌な予感がするのだ。
僕の危機回避センサーがやめとけやめとけと告げる。

「ま、また後で来ます。今からにじょ、にじ、二条城へ行きますので…」
キョどった感満載でなんとかその場を脱出する事に成功した京都の昼下がりは日差しが強かった。
この日、迷宮探検をする事はなかったのである。

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好物の豆腐ドーナツを食べながら、ウハウハご機嫌で二条城へ向かう
ノッポが一人。忍者さんとの戦いは数か月後まで待たなければならない…。


良く晴れた冬の或る日。
いつもの同行者と自転車を借りて京都市内を色々と回ってみた。
紅葉を見たり、ふろしき博物館へ行ったり、あちらこちらへ気の向くままに自転車を走らせた。
さてさて次は何処へ行こうかしらん?
東山方面へ向かう途中、河原町近くを通った時に数か月前の事を思い出した。
そういや同行者は忍者の迷宮にすこぶる興味を持っていたな。
河原町に着いた事だし、いい機会だ、行ってみる事にするか。
二人なら気楽だしなぁ。と、向かうは京都迷宮である。

「たのもー!」と呼び声も勇ましく店の前にいたくノ一さんの所へ行ってみると、
「ようこそ、なんたらかんたら・・・ござる!」と
いきなりのござる口調でござったよ。
こ、このノリ。テーマパークのアトラクション案内の
お姉さんと全く同じ感じだ。
う、うぅぅ。完全にキャラクターに入りきってはる。…まさに忍者。プロ中のプロである。
でも、僕、こういうの苦手なんだよな…。
前に見た時のくノ一さんは普通に喋ってたんだが…。

忍者になり切っているくノ一さんのプロフェッショナル魂に圧倒されながらも
必要な事は聞かねばならない。
「食事をせずに迷宮だけ入るって出来ますか?」って事を聞いてみると…

ずざざざささざーーーーーーーーーーーっ!
え?え?え?もしかしてBボタン押しっぱなし!?
話しかけたくのいちさん、何も言わずにいきなり迷宮の入り口へ向かって猛ダッシュ。
その場に残された我々はぽかーん。
口を開けてあんぐりとは正にこの事だ。

呆然としていた僕達の前へ、
何事もなかったかのよう涼しげに戻ってきたくノ一さんは
「さぁ敵は見当たりませぬ。大丈夫なのでこちらへ!」とかなんとかかんとか。
お、おぅ…。
完全に呑み込まれている我々。蛇に睨まれた云々状態!?
催眠術にでもかかったかのようにふらふらついて行ってしまいましたとさ。

建物の中へ入ると、薄暗い通路が奥へ奥へと続いていました。
くノ一さんが言うには、その通路を進んで行くと更にに入り口があるらしい。
そこが本当の迷宮の入り口で、そこに着いてからが迷宮探検になるとの事。
そして入場料はそこで払う事になっていますので、そこまでは各々勝手に行って下さい、
だって。
何それwちょっとした放置プレイ?w

ジェットコースターの様な展開に戸惑いつつも、
ここまで来てやめます。だなんてとても言えやしない。
入る前から、もしかしたら迷宮ってお化け屋敷?なんて疑ってたんですが、
目の前の通路はどう見てもお化け屋敷の内部と同じです。ありがとうございました。

嗚呼!俺、お化け屋敷苦手なんだよなぁ。
ええ年の大人ちゃんなんだけど苦手な物は苦手なんだよなぁ。
あああああ、あかんわー。テンション下がりまくりやわ~。
お化け屋敷には女子と一緒に入っても、女子を前に盾にして
俺は後からこそこそついていくような卑怯な男なんだぜ…。
そうだ。堂々と胸を張って言える。俺は臆病者だと。

しばらく逡巡するも、意を決して進む。
臆病者とは裏を返せば知恵者だという事だ。
と、何かの小説で読んだことがある。
そう、知恵者らしく取れる対策はすべて取ればいいのである。
って事で、同行者を先に進ませ、かなり離れて後ろからとぼとぼついて行く事にしました。

あいつは囮だ。

しばらく進むと予想していた通り聞こえてきた。
ぎゃーっ!通路内をこだまする同行者の絶叫。
ムフフ。予想通りと言いますか、期待していた通りに、
突然前方に現れた入り口に居たくノ一さんに驚かされたらしい。
だよね。そうなるよね。
我が策あたったか!とニンマリするも、よく考えてみたら、
同行者とあまり離れてしまうと一人だけになっちゃうよね。
そうなると、後ろから突然何かが走ってきたりでもしたら…。
ヒィー!
慌てて先に行く同行者と合流し進む事にしました。

二人で奥の方へずんずん進んでいくと、階段が出てきまして、
やっと迷宮の入り口かとホッとし乍ら登っていくと
突然壁が開き白衣姿の男が目の前に現れた!
一瞬、ビクッとしたんですが、よく見てみると
白衣と言ってもその男が着ていたのは料理人のそれ。
どことなく中華の鉄人のような雰囲気でした。
すごく不機嫌そうな顔つきで何も言わずに下を向き
疲れ切った感じで降りて行く謎の男。
え?全く驚かそうという気がないやん。

どうやら、隣のレストランの料理人さんが、休憩なのかな?
普通に厨房のドアを開けて出てきたようでした。
あまりの雰囲気ぶち壊し具合に笑いが止まりませんでしたわ。

階段を登りきると、ようやく迷宮の入口へ到着。
長かったなぁ…

と、ここで僕を襲う新たな試練ががががが!

先ほどのくノ一さんが再び現れ(神出鬼没か!)、
迷宮内へ入る前の説明&小芝居が再び始まります。
御座る口調で繰り広げられる説明。
このテーマパークのノリ、やっぱり苦手である。

説明をふむふむと頷き乍ら聞いていると、
突然くノ一さん、とんでもない事を言い出します。
「それじゃぁ、今から困った時にしてもらう事を伝授しますね。」
ハ、ハァ?

「指をこうやって~印をむすんでニンニン!と唱えてくださいね。」
???
うぉぉぉう!オ、オッサンにポーズをとらせてあまつさえニンニンと言え…だと?
暗闇の中、くノ一さんに辱められる僕達。

やりましたよ、やりゃあいいんでしょ!ニンニン。やらざるを得なかったんだ。
あまりに恥ずかしかったので、些細な抵抗として口の中でごにゃごにゃ言ってたら、
「声が小さい!」って怒られて何度もニンニンって、叫ばされました。

なんて屈辱だ!
僕、こういうなん絶対せえへん子やのにw

くノ一さんはプロなので最後まで絶対にキャラを崩しませんでした。
むさくるしいオッサン二人相手によくやった!感動した!
大人数相手ならやりがいもあったでしょうに、たった二人相手でも
やりきったくノ一さんは偉いと思います。心底。
薄暗い部屋の中、忍者の前で印を組んでニンニン言わされている姿は
知人友人一同には見せられない姿だと思いました。

そうそう、同行者はR-1にも出たような人間なので、
ノリのいいとこを見せようと張り切っちゃったんだろうなぁ、
大声上げたり声色変えたりかなりサブい事をしてました。
や、やめて!ダダ滑りだから!くノ一さんもリアクション困ってるし!
そんな彼のしょーもない行為が更に俺をいたたまれなくするんだな。

迷宮内へ入るにあたって、懐中電灯を借りることになります。
代金は300円。これが入場料代わりですね。
行灯型でなかったのだけが残念でした。

迷宮の中は屋敷風の迷路になっていて、
暗闇であることもあってなかなか出口にたどり着くことが出来ません。
さっきから何度も脅かされ続けているので、また突然くノ一さんが出てきたりとかするんじゃないの?
なんて思ってしまいびくびくしっぱなしです。

そんな状況の中、
僕達の後にもお客さんが来たようで、
ニンニンって叫んでる声がフロア中に響きわたります。
やっぱり恥ずかしいな、あれは。

迷宮体験した感想ですが、ここは飲んで騒いで楽しんだ後に来る場所ですな~。
それもカップルちゃんとかコンパした後とかならめっちゃ楽しいんじゃなかろうか。

しかし、初めて来たときに、一人で入らなくてよかったよ。
一人で入って、くノ一さんと一対一で、目の前でニンニンなんて言わされたかと思うと…

戦慄が止まらん!

(平成21年12月訪問)

京都忍者 公式サイト
おすすめ度 ☆☆★★★ 遊園地なんかにある迷路みたいなもの。一人で入ってはいけない。
ヘンテコ度 ☆☆★★★ レストランの方は、外国映画に出て来るインチキな日本的雰囲気満点だ!

店内改装の為、迷路は2013年11月4日で閉鎖
入館料 300円

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